「部落探訪」裁判関係の論文とアピール

月刊部落解放5月号 特集「部落探訪」削除裁判の闘い

個人や県連への攻撃も許すな!新潟裁判闘いの視座 上野祐 弁護士

部落さらしをゆるさない!「部落探訪」差止め埼玉訴訟 山本志都 弁護士

差別助長する鳥取ループの「部落探訪」を許すな  片岡明幸 部落解放同盟中央執行副委員長

解放新聞 2024/1/15 主張           

「部落探訪」削除裁判を支援し、鳥取ループの差別動画を残らず削除しよう

原告アピール

「全国の動画・写真削除のために」池田 三男

 2019年1月7日に友人から「池田さんの地元の〇〇(地名)が部落探訪に載っているよ」と言われ、インターネットを検索すると、「差別をなくそう・部落探訪(106)埼玉県熊谷市〇〇」のタイトルで、私の家をはじめ集会所が二か所、表札、自動車のナンバー、会社の看板、墓地、産廃の投棄された場所など写真21枚が掲載されていました。説明文には「○○(地名)の部落は▷▷という名字が多い」、「産廃が不法投棄されている」などと書き込まれ、地域に多い姓を挙げ、また産廃―不法投棄という悪いイメージを拡散しています。私は大きな憤りを覚えました。鳥取ループはタイトルに「差別をなくそう」と入れたり、「差別目的での利用は禁止します」などと書き込んでいますが、実際は差別を助長・拡散しているばかりです。これは何とかしなくてはならないと思い、地元の支部の会議で報告しました。また2019年7月の「熊谷市同和対策審議会」で、この問題を提起しました。その会議ではほかの運動団体の委員も、「あれはひどい、許せない」と強く怒りました。
 2022年11月30日にグーグル社により「部落探訪」の動画約170本が削除されたことを新聞報道で知り、私の地区も削除されたかと期待しましたが、私の地区は動画でない写真だけなので削除されませんでした。
 2023年5月に支部で裁判について話し合いを持ちました。話し合いの中では参加者から口々に「これはひどい」、「何とかしなければ」という声が上がりましたが、原告として裁判を闘うことには、一様に躊躇がありました。なぜならば、原告になることにより、自分が被差別部落出身であることが知られ、家族などが差別されることが危惧されるからです。実際私も提訴の後、他県で暮らす子どもから連絡があり、勤め先に知られることの懸念が言われました。様々な議論がありましたが、誰かが原告にならないと、裁判を起こせないので支部長である私が原告になることにしました。 埼玉県内では2024年2月現在、13市町19か所がさらされ続けています。このままでは地元住民は、いつこの情報が悪用され部落差別に合うのか、安心して暮らしていけません。現在のIT社会の中では、インターネットやスマホは子どもも多くが使用しています。このように誰もが見られる状態に差別情報がさらされている現状は絶対に許せません。
 今回、原告として「部落探訪」削除裁判を提訴しましたが、「部落探訪」にさらされて全国各地の動画・写真の削除のために、最後まで戦う決意です。

「差別をするな!」「差別は許さないぞ」部落解放同盟大阪府富田林支部

 私たちの先輩たちは「差別をするな!」「差別は許さないぞ!」と言い続けてきました。差別が常態化した社会の中で、1922年全国水平社創立に呼応し、河内水平社創立以降、差別撤廃を訴え続けてきました。身分制が確立していた江戸時代、解放令が出された明治以降、更に水平社以降と差別糾弾の闘いや、貧困から生活を守る取り組みは粘り強く継続され今日に至っています。
 「差別をするな!」との主張は、差別を受けた心の痛みからの人間としての叫びであり、長い年月の中で社会を大きく変えてきました。闘いは住民の健康と生活を守ってきました。
〝トラコーマ〟(不衛生の住環境などから発症する眼病)治療への着手、簡易水道の敷設、公衆浴場の建て替え、不良家屋の除去、公営住宅の建設、隣保館の建設、児童館の建設など一〇〇年近い闘いの連続が今日の地域をつくっています。公共施設では、差別の垣根を越えて、学び・育ち・人権啓発の場になっています。示現舎は、私達の『部落差別をなくす』目的を持った発信や教育活動と嘘をついたり、偏見をあおるアウティングを同一視していますが本質的に異なる行為です。
 今回示現舎はおぞましい差別の拡散行為である映像と画像を富田林の部落探訪としてSNS上に掲載しました。第一弾の彼らに対する提訴、陳述に対する報復なのか、数回の地区内の徘徊画像動画・画像の掲載という暴挙に出ました。部落探訪では

①陳述人の住居から探訪を出発するという報復性・攻撃性は差別行為に対して反省するのではなく、さらに差別を繰り返し、抗議の声を押しつぶす行為であり、許されない非人道的行為です。
②墓地を徘徊し、墓石の苗字を調べて特徴的苗字を探す行為は、先祖の霊が眠る場所での冒涜ですし、特徴的な苗字を探し、部落問題として載せることは差別行為であり即刻辞めるべきです。
③地区外の実態と知りながら(?)路上駐車の多さ、廃棄放置された改造自動車などを「同和地区に特徴的な傾向だ……」と無理やり結び付けて偏見をあおる行為は許されません。
④さらに架空の投稿者をつくって「同和地区でないのに同和対策事業が欲しくてでっち上げた同和地区だ」と富田林支部の運動を侮辱しています。
⑤何よりも問題なのは、住民が安穏な生活を送っている住居(公営住宅、持ち家)、車のナンバーなどをさらして、ここが同和地区だと動画や画像としてSNSに載せるという行為を繰り返していることです。しかもいったんグーグルの人権倫理規定に違反するとしてSNS上から削除されていた富田林版部落探訪を、再びSNS上に掲載して差別が拡散する状況になっています。
 なぜこうまでも〝怒りの仮面〟にとらわれているのでしょうか。本当に不幸なことと言わざるを得ません。差別を受けることの痛み、苦しみ、悲しみ、怒りを彼らはなぜ受け止められないのでしょうか。 
富田林支部_原告からのアピール(月刊部落解放5月号)