「部落探訪」削除裁判に対するご支援のお願い
私たち部落解放同盟の活動に対して、常日頃からご支援ご協力いただいておりますことに心から感謝申し上げます。
さて、このたび、私たち部落解放同盟埼玉県連及び中条支部は、鳥取ループ(=示現舎)を相手取って「部落探訪」の削除を求める裁判をさいたま地裁に起こすことにいたしました。
「部落探訪」とは、鳥取ループを名乗る人物が全国各地の被差別部落に潜入してその地名や建物、風景等の画像を撮影してインターネットに掲載し、被差別部落をさらしものにしている悪質な差別行為です。彼は地元住民に承諾をえないまま、個人の住宅の表札や自動車のナンバープレート、姓名が入った墓地の墓誌名等の画像を公表し、またことさら放置車両や廃屋・投棄等を撮影して「部落は怖い・環境が悪い」というイメージを掻き立てています。
鳥取ループは、2015年12月からこの「部落探訪」をネットに公表していますが、2016年3月時点では4か所だったものが、その後、2023年10月31日時点では336か所となっており、ほぼ毎週のように全国各地の被差別部落に潜入して投稿を重ねています。
ところでこの鳥取ループは、2016年に、被差別部落の全国地名リストである「全国部落調査」の復刻版を出版しようと企みました。私たち部落解放同盟は、「地名リスト公表は、差別を助長拡大するものであり、身元調査の材料として悪用される」として、東京地裁に出版の差し止め及びインターネットからの削除を求めた裁判を起こしました。その結果、2021年9月27日には、東京地裁が「地名の公表は違法」という立場から出版の差し止めとネットからの削除を言い渡す判決を出し、2023年6月29日には、東京高裁も、出版の差し止めとインターネットからの削除を命令する判決を言い渡しました。とくに東京高裁は、裁判でおおきな争点になっていた「差別されない権利」を実質的に認め、被差別部落の地名公表は「不当な差別を受けることなく、人間としての尊厳を保ちつつ平穏な生活を送ることができる人格的な利益」を侵害するものだという画期的な判決を出しました。
いっぽう、2022年11月30日、Google社は、鳥取ループが動画投稿サイトYouTubeに投稿していた「部落探訪」の約170の動画を「ヘイトスピーチなどから利用者を守るガイドラインに違反する」として一斉に削除しました。しかし、鳥取ループは削除された動画を別のウェブサイトに投稿し、有料会員に対して公開し続けており、この動画サイトのタイトルやサムネイル画像は無料で閲覧できる状態になっています。東京高裁は判決で被差別部落の地名情報は「ウェブサイトへの掲載、書籍の出版、出版物への掲載、放送、映像化(いずれも一部を抽出しての掲載等を含む)等の一切の方法による公表をしてはならない」(主文)と言い渡していますが、鳥取ループはまったくこれを無視して、いまもネットに被差別部落を掲載し続けています。
「部落探訪」に関しては、新潟県や長野県など掲載された地元の自治体の首長が「市民がさらしものになっていることは、人権擁護上容認できない」として、地元の法務局や法務局支局に直接出向いて削除要請をおこなっています。埼玉では13市町で19カ所の被差別部落が「部落探訪」に掲載されましたが、そのうち狭山市、川越市、加須市、熊谷市など10市長がさいたま地方法務局や同支局に削除要請をおこないました。
また、昨年、埼玉県議会は「埼玉県部落差別の解消の推進に関する条例」を制定しましたが、条例の第3条では「インターネットの利用による情報の提供」を差別行為として禁止しており、「部落探訪」はまさしく県条例に違反する差別行為にほかなりません。このように「部落探訪」は部落差別を拡大助長するもので、これを放置することはできません。このたび熊谷市協議会の中条支部長が勇気を奮って削除を求める裁判を起こしました。この裁判は「部落探訪」として晒された全国320地域(埼玉19地域)を代表した闘いであり、私たち部落解放同盟埼玉県連は、全面的に中条支部長を支援していく所存です。
つきましては、悪質な鳥取ループの「部落探訪」を削除するために、また中条支部長の闘いを孤立した闘いにしないために地元埼玉はもとより、関東一円の皆様のご支援をいただきたく、ここに裁判闘争へのご支援を要請いたします。
2023年11月6日 部落解放同盟埼玉県連合会 執行委員長 片岡明幸